Archive for 11 月, 2007

大村右衛門

 

今年六月十二日に、東大の先生を連れて上野彦馬の写真を拝見しに日本カメラ博物館
に行った。
その後、日本カメラ博物館の館長、谷野先生から、一枚の古写真(四人の洋装軍服姿
の集合写真)について質問させれた。
その写真は谷野先生が鑑定者として関っているテレビ番組に、ある視聴者から送られ
てきた古写真とのことだった。
古写真の持ち主である視聴者は、長州の桂太郎の親戚の方で、この古写真は「大村益
次郎」の写真と聞いているという。
大村益次郎は幕末に長州の奇兵隊を率いた総督で、四境戦争(長州征伐)に活躍し、
幕府軍を退け、その後の戊辰戦争でも上野の彰義隊征伐(上野戦争)でも司令官とし
て活躍した人物である。
靖国神社にはこの大村益次郎が上野方向を望む銅像が建てられている。
まぁ、いわば日本陸軍の父ともいえる人物だ。
しかし、大村益次郎には後世に描かれた肖像画は残っているものの、写真はない。
もし、この古写真に大村益次郎が写っているならば大発見である。
しかし、「火吹きダルマ」といわれた大村益次郎の広い特徴ある額(おでこ)の人物
ではない。
大村益次郎の写真が他にない以上、この集合写真に写っている指揮官姿の人物を、大
村益次郎と断定できないが、かといって完全否定もできないのだった。
僕が注目したのは、この古写真に写っていた敷物(絨毯)の柄だった。
どこかで、この敷物(絨毯)の柄と同じ敷物(絨毯)の柄が写った別の写真を見た記
憶があったのだ。
ところが、・・・思い出せないのである。
この写真を谷野先生から拝見させていただいた時は、その旨をお話しして、思い出し
たらまた連絡することにした。

その後、約一月ほどして別の調べものをしていたら、この古写真と全く同じ写真を見
つけた。
大村で古書店「なずな古書店」を経営している僕の友人の一瀬氏から、送っていただ
いた大村史談会編「大村史話 下」(昭和四十九年)に掲載されていたのだ。
椅子に腰掛けている人物は大村藩の「大村右衛門」他の集合写真だった。
もう一枚、同じ敷物(絨毯)の柄が写った別の写真があり、それは大村藩の「稲田又
左衛門」という人物の写真だった。
このことから、この古写真の中心人物は、大村益次郎ではなく、大村藩北伐軍(三番
隊)の総督、大村右衛門(42才)と判明した。
では、この写真はいつ、どこで、誰が撮影した写真なんだろうか?
それがまだわからない。
また、同じ敷物(絨毯)の柄が写った別の写真は他にないのだろうか?
そんなことを考えていたら、もう一枚、同じ敷物(絨毯)の柄が写った別の写真を見
つけた。
長崎で英語教師をしていた宣教師・フルベッキの写真である。
このフルベッキの写真の足元に写っていた絨毯が、同じ敷物(絨毯)の柄だったの
だ。
これでヒントがまた増えた。

当初、僕はこの古写真の持ち主の逸話から、山口か京都で撮影された写真ではないか
と考えていたが、このフルベッキの写真が見つかったことで考えを改めた。
まずは最有力候補は長崎の上野彦馬の写真館で撮影されたという仮説になる。
しかし、上野彦馬の写真館で撮影された他の写真で、この敷物(絨毯)の柄が写った
別の写真がないのである。
こうして、今では江戸東京の写真館で撮影された写真ではないかと僕は考えている。
それにしても、こういうことがあるので、古写真について調べたりするのが楽しいの
だ。


京都 三条大橋

30大判手彩色古写真 京都 

まずはこの古写真を見ていただきたい。
明治中頃に撮影された京都の三条大橋の大判手彩色古写真だ。
奥に山並みが見えることから、この古写真は鴨川上流の西側から東方向を見ているこ
とがわかる。また人力車が橋の上にあることから明治五年以降の古写真であることも
明白だ。
幕末、この三条大橋の写真でいえば手前、西詰北に「制札場」があった。
現在のコーヒーショップの前辺りである。
さらに西に行くと三条小橋があり、この小橋を西に渡って三軒目に二階建ての旅館、
「池田屋」があった。
元治元年六月五日、祇園祭の宵々山の夜、近藤勇率いる小隊は、ここ「池田屋」に突
入する。
世にいう「池田屋の変」である。
逆にこの写真に見える奥の鴨川東側、この写真でいえば白い倉の向こう側に、「小川
亭」があった。
肥後勤王党の党首で「池田屋の変」で倒れた宮部鼎蔵が潜伏していた旅館だ。
宮部鼎蔵はこの三条大橋の向こう側とこちら側を行き来していたのである。
橋の向こうの縄手通りを北上して探索していた新撰組の土方歳三たちもこの三条大橋
を渡って、「池田屋」に駆けつけてきたのである。
思えばこの三条大橋は東海道の終点で、まだ浪士隊だった近藤勇、土方歳三が初めて
京都に入ってきた場所でもある。

こうやって一枚の古写真を眺めながら、僕はいつもこんなことを考えているのだ。

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